2019.12.05

 

何にというわけでもないのに最近やたら疲れていて、もう早く今年も終わってほしいのだけれど、そうはいっても年末年始というのは(主に帰省のせいで)うんざりするものだし、2020年なんてどう考えてもろくな年にはならないのだから、どうしたってこの陰惨な気分は持続するだろう。毎日毎日稲川方人の「二〇二〇年には、/僕はもう僕の一握りの骨の灰と同じだ」(『君の時代の貴重な作家が死んだ朝に君が書いた幼い詩の復習』)という詩句をうろ覚えのままに思い出してしまう。

 

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sportifyでは自動的にユーザーごとの今年のプレイリストが作られ、私が2019年最もよく聴いたアーティストはハバナイらしい。他にも何か国の音楽を再生したとかいろいろ表示されるなかに総聴取時間もあって、それが去年よりずいぶん減っていたから「充実した一年を過ごしたんですね」みたいな言葉が表示されたけれど、充実した日々を過ごしていたらそんなハバナイばっかり聴くわけがない。

ただ単に、ずっとスマホの調子が悪かったせいでsportifyを開くことが少なかった。秋ごろから突然電源が落ちたるすることが少なくなったから、最近はよく使っていて、ここ2週間くらいは、Nonameというポエトリーっぽいラップをする人のアルバム『Room 25』とラブリーサマーちゃんの新曲ばかり聴いている。ラブサマちゃんは、前soundcloudにデモを上げていた「アトレーユ」がいちばん好きで、それも早く出るといいなと思う。

open.spotify.com

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冷え性がひどくて、風呂に入っても一時間もすると足の先が死んだように冷たくなってしまい、必ず早朝寒さで目を覚ます。冬は苦手。まあ春も夏も苦手だけれど、特に冬はひどく陰鬱な気分になる。

 

その気分のまま、八つ当たり的にいろんなことにうんざりして、松本圭二の新しい詩集の帯文の、「なだれゆく散文的崩壊」の「ゆく」がぜんぜん散文的じゃないじゃないか、とか「ポリフォニックな抒情」なんて何も言ったことにならない、とか、だいたい松本圭二の抒情は、ポリフォニー性を詩の主体として一冊の本に閉じ込めようとするときの相剋において見出されるべきなんじゃないか、とか考えているけど、そんな惹句に文句をつけるのも虚しいことかもしれない。

秋だね、と秋じゃなくても

2019.11.08

 

 もともとストレスが指に出る体質で、疲れたり寝不足になったりすると指先がぼろぼろになってしまうのだけれど、最近はそれだけではなく、少し力が入らなくなることがある。今日はバイトでパソコンを打っているとき左の人差し指が痛くなって困った。ここ2、3週間同人誌の編集で忙しく土日も平日の夜も休みなく働いていたので、疲れたのだと思う。でも明日も明後日も休みだから本を買おうと思って、帰りに古本屋まで歩いていくことにした。

 たしかに疲れていてだるかったものの、今の時期の気候は好ましいもので、歩いているうちに身体が軽くなる気がする。私はどの季節よりも秋が好きで、そもそも秋というのは音の響きからして良いと思う。同じくa音を頭に持つ春や夏は、隣接する梅雨の予感、余韻を密かに持つかのようにu音で終わり、どこか湿った空気があるけれど、kiという乾いた音と組み合わさったaは透明で開放的な空気感を持ち、澄み渡ったこの空気を連想させる。

 

 秋だね、と秋じゃなくても言いたいよ風鳴るさなかまばたきをして

――大森静佳『カミーユ

 

 どこか寂しいような、でも乾いて皮膚にまとわりついてこない秋の空気感には、リリカルでありながら感傷に甘えない毅然とした言葉があう。富永太郎が悲嘆するのは他でもなく秋でなくてはならなかったし、デボラ・フォーゲルは生をめぐる問いに、「秋の論考」をはじめたのだった。

 

私は透明な薄暮の中に墜ちる。戦慄は去った。道路のあらゆる直線が甦る。あれらのこんもりした貪婪な樹々さへも闇を招いてはゐない。

――富永太郎「秋の悲嘆」 

 

十月という月は、全体が銅と灰色のエキスそのものから成り、生を論じるのに特別適しているようだ。十月は概念という灰色の領域に人を惹きつけ、誘いかける。その領域が十月特有の灰色で瞑想的な光景によく似ているからかもしれない。

――デボラ・フォーゲル「アザレアの花屋」

 

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 古本屋では100円のヘンリー・ミラー(猥褻な部分だけ訳されず原文のままの)と最近刊行された鮮やかな黄色のカバーが目を引く片山令子の『惑星』を買った。

 『惑星』の一番初めに置かれている表題のエッセイは、筆者が、子どもの頃お世話になっていたお手伝いさんから「泣かないからぜんぜん手がかからなかった」と言われたことから書かれたものだ。筆者は「本来持っているわたしの質、原形は、こんな乾いた感じなのかもしれないと思い、聞いたその日から、あたらしいわたしがはじめからやり直される感じがした」といい、子供時代の家のことを思い出す。そこでは、くっつきすぎず、周りをまわる惑星をもちながら独立した太陽のように、それぞれが生活していたのだった。そうしてこう結ぶ。

 

こんがらかってしまったら落ちついて思い出そう。静かな、天体としてのわたしを。

 

きっとこの本も、今の季節によく合うものだと思う。

 

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明日と明後日はよく眠りたい。

 

羊の前世(川柳20句)

風上で去る音 睫 夢日記


独裁の空 スタジアムにない季節


いっぺんにかたをつけよう街の犬


訃報収集家の忍び込む議会


バイブルに挿した骨片をください


旧線で目覚める頃にまた来るね


幽霊屋敷で拾うノンブル


「お前なんて嫌いだ」活字を舌で渡しつつ


じゅんすいな奇襲で水を盗んでよ


まだ書かれない序文では彼のまま


青襟にレモンを垂らし逢いましょう


踊り場にあり薄すぎる足


星星の等高線にうなだれる


婚約を破棄するための鹿と森


かろうじて宰相までも持て余す


タブロイド紙でくるむあなたの詞華集


飛距離を測る月面の虫


日記の罫にへつらうなんて


ポケットに羊の前世を縫いつけて


粉飾のほくろ群から朝になる

ライトヴァース(BL(?)川柳20句)

夏だね ふたしかな副詞が揺れている

 

微笑んでライトヴァースの不眠症

 

「太陽を見ないで」 きれぎれの頬

 

憩われて転綴される遺跡など

 

vacant, 星座は今朝にゆるまって

 

猫の額に眼が遠ざがる

 

悔恨に渡る風まで肌の裏

 

反感に至る唇儚くて

 

野菊を渡せば象徴になる

 

風船の彩る日付変更線

 

発熱前は晴れてプログレ

 

ラ行の数だけ手配するから

 

はなぎれにはなればなれのホログラム

 

おやすみの前から語句を揃わせて

 

セロハンテープに性器が増える

 

口唇に心もとない流れ弾

 

Boys in the band, すべて破棄して掠めたら

 

かたい喉、笑ってしまうくらい夏

 

「朝の紅茶の底冷えとかね」

 

汗まみれのシーツに記す18年後の君の戒名

祝日

2019.07.15

 

今日も自然に7時台に目が覚めてしまって、二度寝することもできずにいるとアラームが鳴る。月曜から金曜は毎朝鳴るようにしているから。8時ごろまた眠りについて、結局11時ごろ起きた。適当に雑誌(『ケトル』の渋谷系特集、『子午線』2号)を読んだりしてたら1時くらいになっていて、ご飯を炊いてレトルトカレーをかけて食べた。

天気が悪いし、睡眠の質がひどいのか身体がだるくて外に出る気力がなかったので、ネットフリックスで『スナッチ』と『シング・ストリート』を観る。『スナッチ』はイギリス、『シング・ストリート』はアイルランドが舞台の映画で、高校生の頃はイギリス人になりたかったことを思い出した。パソコンを替えて家でDVDを観られなくなってしまったから家で映画を観るのは本当に久しぶりだと思う。ネットフリックスはなんとなくはじめてみたけれどそんなに好きな映画がたくさんある感じはしなくて、まあ好きな映画を聞かれてもそんなに観てないからあまり答えられないけど、そういう時はたいてい『ハッピーアワー』って答えている気がする。濱口竜介が好きと言うよりは『ハッピーアワー』が好き。映画館に行きたい。

 

今日まだ一歩も家出てないな、と思って7時ごろ外に出た。隣の駅前の本屋に行って、何も買わずに帰ってくる途中スーパーで50円引きの合い挽き肉を買い、ケチャップライスを作って食べた、そのあとでいまこの文章を書いている。

 

SpotifyのプレイリストにMy Summer Rewindというのがあって聴いてみたら、どうも去年の夏私がよく聴いていた曲が集められているらしい。

 

3連休暇だったんだから、期日前投票と美容院に行けばよかったといまさら思っている。前髪が伸びすぎてる。

トマト煮込み

2019.06.15

 

夕方頃することがないから料理でもしようと思って駅前のスーパーで鶏むね肉と玉ねぎとトマト缶を買う。むね肉は安い。帰宅。むね肉をやわらかくする方法を調べる。ボールに入れた肉に酒、マヨネーズ、塩、砂糖を揉みこむ。放置。その間に玉ねぎを一つ切っておく。包丁とまないたを洗って、音楽を聴いたりしていればすぐ十分くらい経つ。そうしたらフライパンにオリーブオイルをひいて熱くなってきたら肉を炒め、適当なタイミングで玉ねぎを入れる。全体にいい感じになったらトマト缶(ホール)と酒を投入、強火で五分くらい煮込む。コンソメ、塩、胡椒、ニンニクのすりおろし(チューブで済ませた。楽)を入れて弱火~中火で十分くらい煮込む。かなり美味しくできた。これくらい雑な料理だと調味料の量が適当で良いのでいい。これは備忘録として書いている。参考にしたのは以下。

 

煮込んで簡単!チキンのトマト煮込み 作り方・レシピ | 料理・レシピ動画サービスのクラシル

 

 

文章が適当すぎるけどまあいいや。

暴投の雰囲気(川柳20句)

うっすらと冥王星にくるまれて

 

雷雲の結果としての 裏切り

 

暴投の雰囲気もあるキレンジャク

 

噴水ごっこで怪我しませんか

 

瞬間に俯瞰している火付け役

 

襖に蔓延る白菜なんて

 

やわらかくしばられていて  木でした

 

直腸の近似値となる星辰図

 

遺文において居座る権利

 

水にしたって引き攣りすぎで

 

緩慢に新しくなる肌 晴れて

 

地下鉄にある(残滓)乱心

 

夕まぐれ幽霊屋敷に置くピアノ

 

液体ならば音叉としても

 

恨みを晴らすための海 青

 

敗残兵のくれた卵は皿に立つ

 

微熱の文法を習って 三度目の夏至

 

棄てられたきりんをふたりで閉じ込めて

 

背信の青空に降る不眠でも

 

群像劇に太古の匂い